〜建築工事と建築業の種類をわかりやすく解説するシリーズ第17弾〜
建設業許可には、工事内容ごとに29種類の専門工事業が定められています。本シリーズ「建築工事と建設業の種類・工事の内容・工事の例示」では、前回までに多数の工種を取り上げてきましたが、第17弾の今回は 専門工事の中でも問い合わせが多い「塗装工事業」 について解説します。
住宅の外壁塗装や鉄骨の防錆など、一般の方にも身近な工種ですが、建設業許可の観点から見ると、意外と勘違いが多い分野でもあります。
今回は、塗装工事業が対象とする工事内容、例示される工事、愛知県で許可を取得する際のポイントまで、行政書士の視点から分かりやすく整理していきます。
塗装工事業とはどんな工事?
塗装工事業とは、建築物や工作物に 塗料を塗る・吹き付ける・コーティングすることで保護や美観を整える工事 を指します。
単に「色を塗る」だけでなく、建物の寿命を守る重要な工種です。
主な目的
- 外壁・鉄部を雨・紫外線から守る
- さび・腐食・劣化の防止
- 美観の向上
- 耐薬品性・耐摩耗性などの性能向上
建物の安全性・耐久性を高める役割を担うため、建設業の中でも専門性の高い分野といえます。
塗装工事に含まれる具体的な工事内容
塗装工事業には、次のような工事が含まれます。
● ① 建築物の塗装工事
もっともイメージしやすいのがこの工事です。
- 外壁塗装(サイディング、モルタル、ALC など)
- 屋根塗装(瓦棒・スレート・金属屋根)
- 室内の塗装仕上げ
- 手すり・鉄扉・雨樋などの金属部塗装
住宅・店舗・マンションなど幅広い現場が対象になります。
● ② 鋼構造物の塗装
公共工事や工場などで多い工事です。
- 鉄骨造建物の鉄部塗装
- タンク・配管・プラント設備の防錆塗装
- 仮設資材や鉄部材の塗装
- 工場ライン・機械設備の塗装
防錆・防食を目的とするため、建物の寿命に直結する重要な作業になります。
● ③ 路面・床面塗装(ライン引きなど)
道路・駐車場・工場などで見かける、路面表示も塗装工事に含まれます。
- 白線・区画線・文字・マークの塗装
- 工場内の動線ライン
- 滑り止め塗装
特に駐車場工事には必ず必要になる工種です。
● ④ 防水目的の塗膜形成
塗装に準じた工事として、塗膜を形成する仕様も含まれます。
- 防水塗料による屋上・バルコニー塗装
- 床の防水・耐薬品塗装
- FRP塗膜工事
防水工事業と重なるケースもありますが、塗装工事業として請負う現場も多くあります。
塗装工事業でよくある誤解
● 「外壁塗装だけなら許可はいらない?」
500万円(税込)未満の工事であれば、許可なしで施工可能です。
※元請・下請問わず同じ基準
しかし実際には、塗装工事は一件あたりの金額が高くなりやすく、継続的な受注を考えると 許可取得はほぼ必須 です。
● 「鉄部塗装は鋼構造物工事業?」
これは誤解です。
鉄骨の組立ては「鋼構造物工事業」ですが、
鉄部の塗装は“塗装工事業”が正しい工種 です。
愛知県で塗装工事業の許可を取得するためのポイント
愛知県で建設業許可を取得する場合、確認すべき点は次の5つ。
① 専任技術者の資格・経験
塗装工事業では、以下いずれかが必要です
- 施工管理技士(建築・土木系)
- 塗装に関する実務経験(7年以上)
- 各種塗装の技能検定
現場経験が豊富な職人さんであれば、実務経験での証明が可能なケースも多くあります。
② 経営業務管理責任者の要件
過去に建設業の経営経験があることが条件になります。
法人・個人事業どちらでも可。
③ 財産要件(500万円の証明)
預金残高または貸借対照表で証明します。
④ 事務所要件
自宅兼事務所も可能ですが、建設業許可の基準に合うように整備が必要です。
⑤ 常勤職員の確保
専任技術者は営業所に常勤で配置する必要があります。
塗装工事業は「目に見える価値」を作る工事
塗装工事は仕上げ工事の一種であり、建物の「見た目」を決める重要な工程です。
しかし役割はそれだけではありません。
- 建物を守る
- 構造物の寿命を延ばす
- 安全性を確保する
外壁塗装や鉄部塗装は、建物の維持管理になくてはならない工事です。
そのため、適正な許可を取得しているかどうかは、元請業者や発注者からの信頼にも直結します。
塗装工事業は建設業許可でも重要な専門工事のひとつ
塗装工事業は、建設業許可の29種類のうち、特に需要が高い専門工事です。
- 建築物の外壁・内壁
- 鉄骨・タンク・配管など鋼構造物
- 道路・駐車場のライン引き
- 防水塗膜形成
幅広い工事をカバーしているため、正しい工種を理解し、許可申請で誤りが出ないよう注意が必要です。
愛知県で塗装工事業の許可を取得したい事業者さまは、どうぞ当事務所までお気軽にご相談ください。
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