建設業許可の「種類」をわかりやすく整理するシリーズ。第12弾となる今回は、建物の強度と安全性を左右する「鉄筋工事」について解説します。鉄筋はコンクリート構造物の骨格にあたるため、高い専門性と精度が求められる分野です。愛知県でもマンション・倉庫・工場建設が盛んなことから、鉄筋工事を専門に行う事業者の許可相談を受ける機会が多くあります。
鉄筋工事はどんな工事か？
鉄筋工事とは、鉄筋コンクリート構造物の「配筋・加工・組立て」を専門に行う工事のことです。設計図に沿って鉄筋を切断し、必要な形状に曲げ、現場で組み立て、一定の強度を保持できる状態に仕上げます。
鉄筋は、柱・梁・壁・床といった建物の主要構造部を支える“骨格”です。そのため、少しの誤差や不正確な接合が後の強度不足につながることもあり、極めて専門性の高い作業とされています。
また、近年では高層化や大型化に伴い、鉄筋の継手方法も高度化し、「機械式継手」「圧接」「溶接」など多様な技術が求められるようになりました。こうした理由から、鉄筋工事は専門工事業として独立した許可区分が設けられています。
鉄筋工事に該当する具体的な作業例
鉄筋工事の代表的な例としては、以下のような作業が挙げられます。
- 鉄筋棒鋼の切断・曲げ加工
- 柱・梁・スラブなどの配筋作業
- 鉄筋同士の結束、組立て
- 圧接・溶接・機械式継手による接合
- 建物の基礎・躯体の鉄筋組み
これらはすべて、鉄筋工事業の許可に対応する工事内容です。
建築一式工事との違い
よくある誤解が「建築一式工事の許可を持っていれば鉄筋工事もできるのでは？」というものです。確かに建築一式工事の中には鉄筋工事を含む“総合的な施工管理”が含まれます。しかし、鉄筋工事だけを分離して請け負う場合は「鉄筋工事業」の許可が必要となります。
つまり、
- 建築一式工事 → 建物全体をまとめる総合工事
- 鉄筋工事業 → 鉄筋を主体とする専門工事
という役割の違いがあります。
特に鉄筋工事を専門に受注する会社や、下請けで鉄筋工事のみを行う事業者にとっては、鉄筋工事業の許可取得が実務に直接関わります。
愛知県で鉄筋工事業の許可が必要となる場面
愛知県に限らず全国共通ですが、鉄筋工事を請け負う際に以下のいずれかに該当すると建設業許可が必要です。
- 工事一件の請負金額が 500万円以上
- 元請として一定規模の工事を発注する場合
- 特定建設業として下請に一定額以上を発注する場合
特に鉄筋加工センターと現場施工を併せて行う事業者では、請負額が大きくなる傾向があるため、許可取得の必要性が出てきます。
専任技術者に必要な資格
鉄筋工事業の専任技術者としては次のような資格が一般的です。
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士（躯体・鉄筋施工）
- 実務経験10年以上（要証明）
資格と実務経験のどちらでも許可取得が可能ですが、書類の証明方法が異なるため、事前の確認が重要です。
まとめ
鉄筋工事は建物の根幹を支える専門工事であり、施工の精度が安全性に直結します。愛知県でも需要が高く、鉄筋工事を専門に請け負う事業者は建設業許可の取得が欠かせません。
建築一式工事との違いを理解し、請負形態・工事金額・今後の事業展開に合わせて、適切な許可区分を整えることが重要です。
シリーズ第13弾では、次の専門工事についてさらに深掘りしていきます。
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